
夜、洗いものを終えて、蛇口をきゅっと閉めたあと。
水の音が消えて、台所には冷蔵庫のかすかな音だけが残ります。
窓の外の色は、もう青ではなくて、黒に近い。
その色を見ていると、わたしは、なんだか少しほっとするのです。
何も起きていない時間。
何も決めなくていい時間。
今年は「変化の年」だと、あちこちで言われています。
新しいサイクルが始まる年。
本質に還る年。
そんな言葉を、この夏だけでも何度か見かけました。
そのたびに、胸の奥が、ほんの少しざわつく。
わたしは、ちゃんと変われているのだろうか。
そう感じた方も、いるかもしれません。
変わらなきゃ、と思うほど、動けなくなる。
ふしぎなもので、「変わらなきゃ」と強く思った日ほど、夜になっても、何ひとつ手をつけられていない。
だって、変化って、大きなことだと思っているから。
仕事を変える。
住む場所を変える。
人との関わりを、整理する。
そんな「わかりやすい変化」を思い浮かべると、足がすくんでしまうのは、当たり前のことです。
その不安は、まだ言葉になっていない変化です。
でも、と、わたしは思うのです。
漠然とした不安は、何も起きていないから生まれるのではなくて、もう何かが動きはじめているから、生まれるのではないかと。
体はいつも、頭より先に気づいています。
季節が変わる少し前に、風のにおいが変わるように。
だから、その落ち着かなさは、遅れている証拠ではなくて、はじまっている証拠なのだと思います。
変化は、決意ではなく、あとから気づくもの。
去年の今ごろの自分を、思い出してみてください。
同じことで悩んでいたはずなのに、今は、少しだけ受け流せている。
前なら泣いていた場面で、今日は、お茶を淹れられている。
誰にも報告していない、小さな変化。
それが積み重なって、人は変わっていきます。
変化は、決意した日に起きるのではなくて、ずいぶん経ってから、ああ、変わっていたな、と気づくものです。
今日は、こんなことを試してみませんか?
「もう変わったこと、を一つ書き出す」
これから変えたいことではなく、すでに変わったことを。ほんの小さなことで十分です。
「不安に、名前をひとつだけつける」
漠然としたままだと、大きく見えます。「お金のこと」「あの人のこと」。名前がつくと、ふしぎと輪郭が小さくなります。
「今夜は、決めない」
決断は、夜には向いていません。決めないと決めるのも、立派な選択です。
最後に。
変化の年だからといって、あなたが急ぐ必要は、どこにもありません。
まわりが速く見えるのは、その人たちが、あなたとは違う場所を歩いているからです。
まだ形になっていないものを、無理に形にしなくて大丈夫。
不安なまま、ゆっくりで、いいのです。
その揺れごと、あなたはもう、次の場所へ向かっています。
今日も、あなたにとって穏やかな時間が流れますように。
星と引き寄せのカウンセラー、宮西でした。
蛇口を閉めた台所に、夜の色が、静かに満ちています。
明日には、また少しだけ違う色になっているはず。
気づかないくらい、ゆっくりと。
おやすみなさい。
また、夜のどこかで。



